コラム

さくらんぼ教室だより(代表)

2022.09.01

オリジナルでいい・・・「発達障害と家族の物語」 🍒教室だより2022-09月号

●「耳から聞いた内容を覚えることが苦手なので、ゆっくり話してください」

と、発達障害特性をもつお父様。

面談でお伝えする学習状況や進路情報など一つひとつを確認し、熱心にメモを取られます。

「自分も特性があるから子どもの気持ちがよくわかる」

とおっしゃるお父様のペンケースには、よく削った同じメーカーの鉛筆が整然と並んでいました。

手をつないで帰る父子の後姿、今も時々思い出します・・・。

 

●『僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語』(創元社)の著者でルポライターの遠藤光太さんは、結婚して父となった26歳で発達障害の診断を受けました。

学校や社会での「生きづらさ」は、特性がありながらも過剰適応してきたことにあったと気づきます。

本書は、発達障害のある自分を受け入れ、家族との関係性が変化し深まっていく日々の物語です。

 

学齢期に不登校を克服、苦しくても相談できず

「間違えないように」

「心配をかけないように」

無理をして過ごした遠藤さん。

「誰かが僕の心からこぼれ落ちてしまう本音を掬ってくれたら、どれだけ安心できただろう」。

 

父となり「強い父親」を頑張りすぎて仕事も家族も危機に陥りますが、診断が家族との「関係」に目を向けるきっかけに。

言葉で説明しようとして衝突していた夫婦関係が、花をプレゼントする、仕事の愚痴を聞く、マッサージやペディキュアを塗ってあげるなど些細な行動で柔らかくなっていく。

「保育園に行きたくない」とごねる娘さんに自身の幼い日を重ね、「こちらから娘の手を離さない」と決めて待つ・・・。発達障害という特性があるからこそ、「オリジナル」でゆるぎない関係性を築いていくことができる。

そう教えてくれる、ご家族でお読みいただきたい一冊です。

僕は死なない子育てをする: 発達障害と家族の物語 | 遠藤 光太 |本 | 通販 | Amazon

 

 

●先日🍒飯田橋教室(吉田教室長)に千代田区特別支援教育部会(通級)の先生方がご見学にみえました。「個々に対応できるシステムが素晴らしい」「新しいジャンルの業界なんだと感動」「子どもへの温かい接し方に学ぶことが多かった」などのお声をいただきました。今月は豊島区、足立区の先生方に、学習指導や進路についてお話させていただきます。

 

★10月16日(日)14:00「(障害のある子が一人で生きていくためのチカラを学ぶシリーズ第2回)親子で学べる!発達障害のある人の社会人スキルアップ講座 知っておきたいひとり暮らしのサバイバル術」(一社ライフプランサポート協会主催)で、伊庭、宮本がお話します。詳細は後日チラシで!

 

(伊庭葉子)

 

追記:

遠藤光太さんの『僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語』(創元社)、

そして来月10日の🍒講演会にお招きする西川幹之佑さんの『死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由』(時事通信社)、

どちらもタイトルに「死」という字が入っていてドキっとするのですが、

いずれも「死」(死にたいほど辛い)から「生きる」に向かう本だと思いました。

遠藤さんのように過適応によって特性が目立たないけれどその分苦しい子、

西川さんのように特性がはっきりして目立ちやすく周囲から叱られたり誤解されたりして苦しい子、

さくらんぼ教室にはどちらもたくさんいますね。

一人ひとり、「あなたはそのままで素敵な人」。

子どもたちが

「自分にはできることがたくさんある!」

「他の人と違うやり方や生き方でもいい!」

「今苦手なことも工夫や練習によって少しずつ変わっていく可能性がある!」

と気づく場所、それがさくらんぼ教室でありますように。