2021.10.01
『みんな水の中』 一人ひとりの心を見つめて 🍒教室だより2021-10月号●OBのAさんが仕事を辞めることになったので相談したいと連絡をくれ、一緒に都内の支援機関に行くことに。
真面目な彼は前日に下見をしてくれ、「明日は〇時〇分にここで待ち合わせをしましょう」と駅出口の写真まで送ってくれました。
幼児さんだった彼がもう20代、方向音痴の私を誘導してくれる、なんて頼もしい存在!
そして当日、待ち合わせの駅に行き、あれ? 彼から「出口」の写真はもらったけれど、そこには「A1」「B2」などの記号や番号はありません。
この写真はどこ?
彼から届いた写真といくつかの出口の風景を照らし合わせながら待ち合わせ場所を探し、無事に会うことができました。
なるほど~!これが彼の世界!
彼にとって日常生活の手がかりは「映像」。
彼が見ている世界、これまで頑張ってきた道のりを垣間見た気がしました。
●「サッカーとかバスケットとか団体競技に参加する意味がわからない。
自分がそこにいるのにTV中継を見ている感じ」
「人間関係の中に入ると何かしらトラブルになる。できることならどこにも出かけず透明なケースに入っていたい」
これまで出会った生徒さんからそんな話を聞いたことがあります。
「ぼくはぼくだけの固有の世界に住んでいるぞ」・・・『みんな水の中』(横道誠著/医学書院)は、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)と診断された大学教員である著者が、発達障害の人が生きる世界を鮮やかに表現しています。
音や光の過敏さ、
「水の底に沈んだ漬物石みたいな」運動のぎこちなさ、
マルチタスクの困難さ、
「だいたい何か忘れる」日々、
その「水の中」の世界には子どもたちの心の中を理解するヒントと、発達障害という個性をもつ人たちが活躍する可能性をたくさん見つけることができました。
著者はいいます。
「私もあなたも、脳の多様性を生きている」「人類がみな、相互の交流を行い、地球人の文化を豊かにしていければ素晴らしい、と夢見ている」と。
●先月、さくらんぼ教室の生徒数が初めて2700人を超えました。
教育事業部が指導する都立高校生の講座、通級等を含め私たちは日々約3000人の個性と出会っています。
来春は高校生活をサポートする「まなサポ」も開校、私たちができる教育も少しずつ広がります。
今月の10年・20年表彰では、長く頑張ってきた先輩たちの歩みを各教室で振り返る機会。
夏に生徒さんに実施した「さくらんぼ教室アンケート」で、教室のいいところTOP4は「勉強やSSTが楽しくてわかりやすい」「先生が優しい・明るい・元気」「友達と話ができる」「先生が話を聞いてくれる」で、全教室共通でした。
多様な個性をもつ仲間が共に学び、交流し、集える場所をこれからも一つひとつ大切にしていきます。
●今月30日に予定していた「第5回社会人研クラス修旅行(箱根)」は、感染状況を鑑み来春に延期としました。
130人のお申し込みをいただきロマンスカーホームの下見をしてくれた生徒さんもいて、延期は苦渋の決断でしたが、「きっと箱根で会おう!」が合言葉です。
ご協力ありがとうございました。(伊庭葉子)